日録 >七月十五日 >紙屋川 < 1 … 8 9 冊子 うみになる 誰もが歩くようでいて 立ち尽くす場所へと続いていく 雨に濡れないように水に飛び込み さびしくないように人混みのなかへと紛れこむ 浅く沈む ゆっくりと うみになる コンビニで同じものを食べている人に 安心する フランクロールの袋を裂く仕草に 日常の僅かな律動をみつけて 走り 走り 止まり また走る リアウィンドに流れた月と 深夜のAMラジオ放送 すべての交信の端切のような ざらつきを耳に浸しながら うみになる やさしいせかいの綻びから 断崖に立つとき ツェランの声は喉奥で震え ヘルダーリンの詩句は砕けた波音にかわる 朔太郎の月明かりに目を細め その空白にブランシェの沈黙を読む