山桜

小さいちいさい種の頃

風に吹かれて地に落ちて

芽をふき根をはり

大きく育ち

晴れた日は明るく輝き

雨の日はぬれるにまかせ

風の日は大きく枝をゆらし

月の夜は静かに眠り

苦しい事も哀しい事も

胸一つにおさめ

どこへ行くこともなく

ここを終のすみかとして

ながいとしつきがたちました

世の変化はめざましく

日の光は浴られず

雨は道を流れて川となり

根を張りがたく

弱るばかり

それでも

道ゆく人に

なぐさめはげまされ

ここで花を咲して

生きてゆきたいのです