かぜのおと

きみが歌う

きみが踊る

希望のような声で

未来を照らすような身振りで

それは美しく

力強く

誰かの涙を癒すものだと

信じられている

けれど

その光の届かぬ場所で

だれかは

ますます静かになってゆく

まぶしすぎるその姿が

彼らの疲れを

告げ口するようで

声を持たないわたしたちには

その歌は

ただ

遠くで鳴る風の音

それでも

わたしは耳をそばだてる

その風が 

どこから吹き

誰の肩をすり抜けていくのかを

笑顔の外にいる人

言葉を返せない人

目を伏せて

光に背を向ける人たちの

その静けさに

わたしは目を凝らす

その沈黙が

ただ

見過ごされてゆくだけの存在

ではなく

見えぬままに在る

名もなき祈りかもしれないと

この詩が

ひとつの影にも届かぬのなら

それでも

その影を想うために

わたしは書いている

ただ

風の音のように